仙台市青葉区で一級建築士事務所の工務店を営む株式会社ソシアルでは、創業2か月が経過致し、少しづつですが工務店らしい業務をこなし始めました。
今回は塗装について少しお話します。皆さんはご自宅をリノベーションするときに内壁の仕上がりについてどんなイメージを持たれますか。ほとんどが手軽で扱いやすいクロスの張替えというのが一般的ではないでしょうか。ところが、重厚感やビンテージ感といった本物の雰囲気を醸し出すためには、壁紙クロスでは物足りなしを感じることがあります。対してタイル、石、煉瓦のような天然素材に近い品物はその点を網羅しますが、価格面で現実的ではありません。そこでその両面を叶え、古くから建築の仕上げとして使われてきた塗装はとても魅力的に感じます。コラムの筆者も塗装に魅せられたうちの一人です。
塗装には種類、塗り方、色艶など豊富に存在し、選定するのが容易ではありません。そのため設計者のアドバイスをもとに、自身でも多少の知識を得ながら工事に着手するべきでしょう。特に色に関しては(クロスも同様に)面積効果という現象が存在します。面積効果とは人間の視覚特性によるもので、同じ色でも面積が大きいほど明るく、面積が小さいほど暗く感じるというものです。これは面積が大きいほど光を反射する面積も大きくなり、より多くの光が目に入るためです。気に入って選んだ少しグレーがかった色を壁一面に塗ったら、ほぼ真っ白に見えてしますという事がよくあります。そのため、実際にイメージしている色より幾分暗めの色を選ぶようにお勧めしています。また、小さな色見本帳を見たことのある方も多いと思いますが、その中から選んだ色の前後3パターンのA4サイズ程度のサンプルを依頼したり、実際の内外壁面の少しの範囲に試し塗りしてもらう等してから、最終決定するべきです。
次に艶です。艶は大きく分けて艶消(フラット)・半艶(セミグロス)と全艶(ハイグロス)に分類され、艶を消せばマッドな質感で重厚感やビンテージ感が漂い、艶を出せば光沢感のある贅沢で優雅な仕上がりとなります。艶が少なければ、傷がついた部分をタッチアップ(部分補修)しても目立ちにくく、艶が多ければ、非常に目立つため補修に工夫が必要です。
そしてこれらはすべて職人の手によって、刷毛やローラー、スプレーや布等を仕上がりのパターンに合わせて適正に使い分けながら仕上げていくわけですから、それ相当の技量が必要となります。それだけではなく、その日の気温や湿度、下地の乾燥状況や平滑状況、施工中の塗り重ね行う際のオープンタイムなど、複雑な要素が組み合わさって仕上がっていくわけですから、それはそれは納得のいく代物が出来上がる事でしょう。
しかし、実際に工事を依頼されるお客様は、仕上がった状態しか見ることはなく、その状態が良し悪しの判断基準となり、このような工程を踏まえたことを知る由はありません。ですので先述しました色と艶に関する最低限の知識を持ってリノベーションに着手して頂きたいと思います。